匣の中にいたのは、涼子だった。

腕も、足も、胴さえない涼子は恐ろしい形相で美馬坂の首に喰らいつき、声を上げた。



























































匣の中にいたのは久保だった。

腕も、足も、胴さえない久保はいつもの久保と変わらぬ表情で美馬坂の首に喰らいつき、声を上げた。











「ほう」













私は美馬坂の血飛沫を見ながら、呆然としていた。

久保の身体に腕はない。

それにも関わらず、美馬坂の良肩にはくっきりと、

くっきりと、
















































血で出来た手の痕が、ついていた。







それは首から噴き出している血の洪水でみるみる赤に染まっていく。

ソレに気づいたのは恐らく私だけであることを、

私はしばし気付けずにいた。