このまま別れたくないと、


思ったのは果たしてどちらだったのか
















恋の始まり












日暮れが近づき、カラスの鳴き声が子供たちに遊びの時間は終わったのだと告げる。

別れを告げていなくなる子供達。帰宅を急ぐサラリーマン。

その中で、戸惑いながら男を見上げる少女が一人。

その中で、何かを決めかねているように目を伏せる男が一人。

その空間だけまるで時が止まっているかのように、音もなく、動作もない。






「また明日ね!」

「バイバーイ!」




まるで二人を急かすような子供達の声が聞こえる。

もうすぐ暗くなる。彼女をあまり引き止めてはいけない。







「いつもここで、何をしているんだ?」

「え?」





意を決して、出た言葉は平凡なものだ。

アメリカにいた頃からあまり女性と話すのが得意でなかったJにはこれが精一杯。

彼女はJの問いに少し顔を赤らめながら、口を開く。






「本を読むのが好きなんです」

「・・・そうか」






そういえば彼女はいつも本を読んでいた。

歩いている時も、何かの本を持っていたのを見た記憶がある。

ならばボクシング雑誌も読書の範疇なんだろうか?

聞いてみたい気もするが、上手く言葉が出てこない。







不器用ながら言葉を交わしていても、縮まらない距離。

そうしている間に辺りは暗くなっていく。

口惜しいのを堪えて、Jは立ち上がった。

いつまでも彼女を引き止めておくわけにはいかない。





「暗くなったきたな。引き止めて済まなかった」

「そんな、こちらこそ!あ、これご馳走様でした!」




そう言って勢い良く頭を下げる彼女の手から空の缶を受け取る。

自分で捨てます!と慌てる彼女を手で制して。

すぐ傍にあったゴミ箱に二本の缶を投げ入れる。

二つの乾いた音が、網の中で鳴るのを確認して彼女に軽く会釈する。






「あの!!」






走り出そうとした瞬間、彼女の高い声がもう誰もいない河原に響いて足を止めた。

振り返ると、もう夕日は沈んでしまったのに真っ赤な顔をした彼女が鞄を抱えて立っている。






「な、なまえ!!聞いてもいいですか!!」




そういえば、名を聞くのを忘れていた。

そんな基本的なことすら忘れてしまうほど、自分は緊張していたのだろうか。

そんな自分のザマに苦笑せざるを得ず。





「男塾一号生、Jだ。・・・・・・俺も、聞いてもいいか」

「M女学院のです」

「Thanks。In addition, it is tomorrow」

「え?」

「また明日」

「は、はい!!」





彼女の返事を聞くと共に、Jは走り出した。

顔が、熱い。きっと彼女と同じぐらい。

こんなにも、自分の感情が高揚するのは闘いの中以外では初めてかもしれない。





いつものペースも忘れてJは無我夢中で走っていた。

あっという間に男根寮に着く。

門限は過ぎていたが、いるはずの門番がいなかった。

その代わりに筆頭が悪戯小僧のように笑いながら、部屋の中から顔を出した。





「ふっ、J。言い訳なら俺がしておいてやったから、入って来たらどうだ」

「桃・・・・そうか済まなかったな」

「貸し一つってところだな。それよりも・・・・・」

「WHAT?」

「いや、中々隅に置けないと思ってな。ま、今度俺にも紹介してくれよ」

「・・・・・・・・・」







見られていたのだろうか。

一瞬、背中にヒヤリとしたものを感じたのは気のせいではないだろう。

仲間でありながらどこか得体の知れない男である桃に、Jは冷や汗が出るのを感じた。











とりあえずは仲間達にどう隠そうかと思いながら。

Jは明日からのメニューを組みなおそうと考えた。

もう少しだけ早く、に会いに行くために。








明日は、彼女の名を呼ぼう。














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パソコンが壊れてデータが消えた為、どうやって終わらせるつもりがわからなくなってしまいました。
そんな訳で不完全燃焼。書き直せたら書き直します。ごめんね、J−!