彼は何も言わないから、

表情からは何も読み取れないから、






だから余計、触れたくなる。
















触れる、その行為が












昼過ぎから振り始めた雨は、夕刻が近づくにつれ激しさを増している。

雷が鳴りそうな、湿気の多い中途半端に暑い気温。

その空を、大きな背中が見上げているのを見つけた。







「月光?」

「・・・・・か」





何をしているの、と聞けば黙ってまた空を見上げる月光。

考え事をしているのかな、邪魔したかな、と思っていると、月光の手が私の頭に触れる。





「そんなことはない」

「え?」

「雷電を待っているだけだ。邪魔じゃない」





そう言って私の髪を撫でる。

その仕草はゆっくりと優しくて、心地良い。





「どうして私の考えてたこと・・・・」

「分かるのか、か?雰囲気で分かる」

「雰囲気?」

「そうだ。触れればもっとよく分かる」





それはまるで悪戯のように。

月光が私の頬に触れる。

輪郭に沿って大きな手が滑って、人差し指が唇に辿り着いた。






「月光?」

「心拍数が少し上がっているようだな」

「そんなの、」




月光のせいじゃない、と負け惜しみのように呟く。

自分の頬が赤いのが、鏡を見なくても分かる。

それぐらい上がっている熱。






「月光に、」

「なんだ」

「月光に触れたら、私も月光の考えていることが分かる?」





このままじゃなんだかくやしいから。

私だけこんな、ドキドキしているなんて、くやしいから。

月光が答える前に、少しだけ背伸びをして彼の頬に触れる。

私とは正反対の、少し低い体温が手のひらから伝わる。






「・・・・・分かったか?」

「分かんない」




意地悪な笑みを浮かべて、月光が笑う。

あまり見たことのない月光の表情に、私の体温はますます上がって。

きっと心拍数だって、正常値なんてとっくに超えてる。








互いの手が、互いの頬に触れている、そんな距離で。

私はそっと月光の首に手を回して、背伸びをした。






!?」







だって、私だけドキドキしているなんて、そんなの嫌だから。

そんな言い訳を心の中で呟いて、

彼の頬に、そっとキスを落とす。









雨の音が遠くて、

梅雨の到来を予感させる、気だるい気温。

その中できっと、






私と彼の体温だけが真夏のように、暑い。



















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恋人未満な二人。雷電が出ていけなくて困っている率89%
月光やJ・雷電なんかはさらっと恥ずかしいことを言って女の子を赤面させてそうです。
自分たちは何言ったか分かってないみたいな。
男塾には天然たらしの生息率がかなり高そうだと思います。