月は人を酔わせる。

酒も人を酔わせる。





男は、女を酔わせる。









もしも初夜が訪れたなら












卍丸は酒を飲んで酔っ払った相手に月見を楽しんでいた。

口説いて口説いてようやく手に入れたチャンス。

ニヤつく顔をなんとか抑えて、あまり酒の強くないの杯に日本酒を注いでいく。





「ん、卍丸・・・・もう飲めない」

「ああん?俺の酒に付き合うって言ったのはだろ?」

「んー、でももう・・・・・眠いよ」

「じゃ、寝るか?」

「うん、寝る」






その言葉に卍丸がニヤリと笑ったのに、が気づくはずもない。

時刻は既に深夜を過ぎていて、物音しない静かな夜更け。

そっとを抱き上げると、卍丸はそのまま寝室へと足を向ける。




、ベットについたぜ」

「うん・・・寝る・・・・」




卍丸の首に絡まった腕が、布団の中へと入っていく。

その瞬間を見計らって、卍丸はするりと同じ布団の中に滑り込んだ。





「卍丸・・・いっしょにねるのぉ・・・?」

「おう、いいだろ?」

「うん・・・・」





そう言いながら布団の中で抱きついてくるのチャイナ服のスリットから手を滑り込ませる。

滑らかな肌の感触を楽しみながら、口付けるとが嫌、というように首を横に振った。







「んん・・・・・」





首元のボタンを外して、白い首元に吸い付く。

髭がくすぐったいのか、先ほどと同じように首を振るの胸元に―――――




「ぐほっ!!」

「んん〜〜〜〜〜」



顔を埋めようとした時、の肘が卍丸の頭にクリティカルヒットした。




・・・おきたのか?」

「・・・・ふぁ・・・」





寝ている。寝てはいるが、さっきからの動きは半端じゃない。




「コイツ、寝相悪ぃのか・・・?」




卍丸と同じく武道の世界に生きるの腕は半端じゃなく強い。

もちろん、卍丸とは比べるべくもないが、寝ぼけて殺されかけたのではたまらない。





「やっぱ正当法で行くしかねぇのか・・・・・」






ご馳走を目の前にがっくりと項垂れた卍丸は、それでもを抱え込みその唇に貪りついた。

今夜は眠れないだろうことを覚悟し、の胸元に顔を埋める。

もうすぐ夜が明けようとしていた。

















「卍丸ーーーー!!あんた私に何したのよーーー!!」

「何もしてねぇ!」

「嘘おっしゃい!!!」




翌日、今にも殺し合いに発展しそうな鬼ごっこをする二人を目撃した人間が何人もいたという。