一つの布団を挟んで、向かい合う二人の男女。


障害になるものなど、一つもなく―――――・・・・?














もしも初夜が訪れたなら













「影慶、もう・・・・寝ようか?」


「ああ・・・そうだな」






影慶とはれっきとした恋人同士である。

が、この二人付き合って一年も経つのにいまだ一線を超えてはいない。

そんな二人にいい加減痺れを切らした同輩達が付き合い一周年の記念にプレゼントしたのが今回の旅行だった。

予め根回ししてあった旅館側も心得たもので、用意されたのは大きめの一組の布団と可愛らしい箱に入った避妊具。

さすがにそれを見た時はやりすぎだと絶句した影慶だったが、そうした間にも夜は更けていく。

覚悟を決めて、厳重に包帯が巻かれた腕での腕を引き寄せる。






「ん・・・・・」






抵抗なく重ねた唇を少しずつ角度を変えながら、啄ばんでいく。

自分とは違う柔らかな唇の甘さに酔いながら、の浴衣の帯に手を掛けた。






「え、いけぃ・・・・」





口付けは少しずつ激しさを増していく。

いつもはただ翻弄されるだけのの舌が必死に影慶の舌の動きを追う。

頬は赤く高潮し、涙目になりながら必死でしがみついてくる女に欲情しない男がいるだろうか。

ゆっくりと布団の上に押し倒しながら、影慶は枕元の避妊具に手を伸ばした。





「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・?」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・影慶?どう・・・したの・・・」





ふいに動きが止まってしまった影慶をが見上げる。

だらだらとソレを手にしたまま固まってしまった影慶にふと、は思ったことをそのまま口にした。





「もしかして、その・・・・ソレ・・・・使い方がわからない・・・とか・・・?」

「・・・・・・・・・・・・」





男としては非情に情けないであろう事だが、影慶は正直に頷いた。

途端にの顔を真っ赤になって、二人でソレを見つめる。







「私も・・・・・こういうこと、影慶が初めてだから・・・・・わからない・・・」

「すまん、俺もだ・・・・」





互いに初めての相手であることが分かり、どことなく嬉しく感じたがこれとそれはまた別の話。

別に無くてもいいという考えも出来るのに、超が付くほど生真面目にそんな選択肢はない。

それでなくとも、男女の情事にはとりわけ疎い二人なのだ。





「今夜は・・・・もう寝よ?」

「うっ、しかし・・・・」

「私は影慶といれば幸せ。駄目?」






普通ならば罵倒されて嘲笑されてもおかしくないの言葉に、改めて彼女の優しさを再認識する。

そしてそんな彼女の上目遣いの訴えに影慶が従わないはずがない。

結局その晩は二人仲良く抱き合いながら、寝る羽目になり。

彼女が眠った頃を見計らって、影慶がトイレに飛び込んだのは秘密の話。













そして後日、影慶が性教育の授業を他の死天王から受ける羽目になったのも、彼女には内緒の話。