ふと昔母が歌ってくれた歌を思い出した。



かごめかごめ

かごのなかの とりは

いついつでやる




歌声の主はもういない。








童歌














「それ・・・・なんだっけ」





思い出していただけだったのに、どうやら声が出てしまったらしい。

もぞもぞと布団の中から出てきた腕に後ろから抱きすくめられる。






ちゃん?せっかく脱がしたのに・・・また着ちゃったの?」

「いつまでも裸のままでいられません」



ゆっくりとその腕に引かれながら、布団の中に再び入る。

拗ねたように「また脱がさなきゃね」とボタンに手を掛ける里村に苦笑せずにはいられない。




「もう・・・いい加減にして下さい。明日も仕事なんですから」

「だって僕だけ裸って不公平でしょ」

「じゃあ里村さんも服着て下さい」

「何言ってるの。裸で抱き合うのがいいんじゃない」




器用な指先にあっという間に寝着が肌蹴させられてしまう。

どうにかしようと開いた襟先を押さえると両手を掴まれる。

腕の動脈部分に唇が吸い付き、紅い跡が付いた。





「やだ・・・・里村さん!」

「いいじゃないの。こんな所キスマークだなんて誰も思わないよ」

「そういう問題じゃ・・・・」

「じゃあ別の場所ならいいのかな?」






そう言って手は太腿を撫でる。

普段メスを握っている細い指先は人間の身体の構造をよく知っている。

当然女の身体も性感帯もその全てを熟知しているわけで。

サディストの彼は嬉しそうに私の両腕を片手で拘束した。







「僕ちょっと足りないんだよねぇ。久しぶりだし」

「さ、里村さん!?もう無理ですってば!」

「いいじゃないの。すぐ気持ち良くしてあげるから」



ざらりとした舌に頬を舐められた。

そのまま下に動いて、首筋辺りを執拗に吸われる。

動脈を辿るように動く舌は薄い皮隔てて肉の感触を楽しんでいた。






「・・はぁ・・・・んん・・」




声を上げれば「イイね」と呟かれる。

羞恥に口を閉じればそれを許さないというように胸を掴まれた。




「声聞かせてくれなきゃね。じゃないと無理矢理開かせちゃうよ?」

「・・・だって・・・・ぇ・・」

「じゃあさっき歌ってた歌でも歌う?なんだっけ、あれ」






そう聞かれても答えることなんて出来ない。

思考はもう泥の中。

眼鏡を外した里村が笑っている顔が見える。

母の顔すら思い出せない。















「愛しているよ

そう呟かれて。






私にはあなたのその声が

快感を誘う子守唄。