どうして認めることなど出来ただろう。 が死んだ―――その知らせが天霧の元へ届いたのは、二日後のことだった。 合流地点にいつまで経っても姿を現さなかったを不知火が不審に思い捜索に出かけ、森の奥で心の臓を一突きにされた遺体を見つけた。 「そんなわけないでしょう」 始め天霧は信じなかった。 がたかが人間如きに殺されるわけがない。 だが不知火が見せたのは、もう二度と目を開くことない物言わぬ遺体だった。 「―――――どうして、」 震える喉から出た言葉に応える者はいない。 冬場だったことが幸いしたのか腐らずに原型を留めたままの身体。 「―――・・・・」 頬に手を添える。冷え切った身体は確かに彼女が死んでいるということを証明していた。 だが謎が残る。誰が彼女を殺害したのか。 ただの兵士になど不可能だ。いや、例え新選組の幹部達でも彼女を殺すのは不可能だろう。 彼女が自ら戦いを放棄しない限り・・・・・ 「まさか!」 ふと頭に浮かんだ考えを振り払うように、頭を振る。 そんなはずはない。彼女が自ら死を選ぶなど。 だが天霧は気付いていた。の自慢の黒髪が、一房切り取られていることを。 それはまるで死者を悼むような。 愛する者の形見として切り取られたような。 敵がそんなことをするはずがない。 ならば何故。 一体誰が彼女を殺したのか。 一体誰が彼女の髪を切り取ったのか。 ぐるぐると天霧の頭の中を思考が駆け巡る。 そしてある結論に達っする。 それは天霧にとってあまりに残酷であまりに無慈悲。 もし彼女を殺した人物と髪を切り取った人物が が自らの運命を委ね、を殺した後、その人物が髪を切り取ったとしたら。 それはを殺した人物とが愛した人物が かつての彼女との逢瀬を思い出す。 誰も愛さなかった。 なのにある月夜の晩から、様子がおかしくなった。 天霧に抱かれることに拒否はせずとも疑問を抱くようになった。 「許さない、そんなことは」 言ったはずだ、貴方は私のものだと。 貴方に愛されなかった。 貴方に愛されたかった。 己の中の鬼の血が沸騰するのを感じる。 目の前が赤く染まり理性を失くすその鬼の習性が、天霧は嫌いだった。 けれど今は己の怒りが抑えきれない。 許さない。 許せない。 貴方は最後の最後まで私を拒んだのか。 私を愛さないその瞳が、他の誰かを受け入れたというのか。 二人の歩みは重ならず、貴方の背中ばかりが目に映る。 けれどそれでも私には、 貴方だけが世界の全て(さぁ、鬼の呪いをもって宴を開こう) |