普段はやたら量だけが立派な大皿の料理が並ぶテーブルに、

決して派手ではないけれど、控えめで鮮やかな料理の数々が並ぶ。

鳴った腹の音は果たして誰のものだったのだろうか。






















団欒
















「うまそうじゃねぇか!早く食おうぜ!」






一番に声を上げたのはやはり卍丸だった。

テーブルの上でカタカタと子供のように音を立てながら、、影慶と邪鬼が来るのを待っている。

それを呆れたようで見つめる羅刹。





「貴様、少し落ち着いたらどうだ」

「腹減ってんだ、俺は!」

「恥ずかしいとは思わんのか」

「あん?誰に対してだ?おめーにか!?」





ガタン、と音を立てて立ち上がり卍丸が拳の構えをとった。

一瞬にして部屋の空気が変わる。






に対してだろう、それすら察せぬとは愚かの極み」





やれやれ、とため息をついてそう言ったのは羅刹ではなくセンクウだった。

そのすぐ後ろにはが困惑した表情で立っている。





「皆さん・・・・どうかしたんですか?」

「ふっ、気にすることはない。」




そう言ってセンクウが自分の席の隣の椅子を引いた。

促すような仕草に、はそこに座る。







「揃ったか」




四人が席に座ると同時に、影慶と邪鬼が姿を現した。

上座に邪鬼が座り、その横に影慶が座る。







「ふっ、こいつはうまそうだな」

「和食・・・ですね」





影慶が照れくさそうにを見た。

目が合う。

が二コリと微笑んでみせると、影慶は慌てて目を逸らした。

その様子を面白くなさそうに隣の席のセンクウと向いの席の卍丸が見ていた。







「おいこら、影慶!なんなんだ、今のは!」

「今のは見捨てておけんな」




影慶に詰め寄る二人。影慶は慌ててブンブンと首を横に振る。




「別に何もない!」

「ほう、そうは見えんかったがな」




二人に便乗し、邪鬼までもが影慶を睨んだ。

けれどその口元は笑っていて、どこか楽しげである。




「邪鬼様!」





からかわれているのだと知り、影慶は悲鳴に近い声を上げた。

途端にいくつもの野太い笑い声が響く。





「何慌ててんだよ、マジでなんかあんじゃねぇだろうな!?」

「ふっ、抜け駆けなんて真似影慶に出来るわけなかろう」

「ああ、いや・・・・」



バカにするように笑い転げる二人に影慶は目線を彷徨わせた。

その様子は明らかに怪しい。誰かどう見たって。







「おいおいおいお、てめぇまさか!!」

「影慶・・・正直に言えば許してやろう。何かあったのか?」

「あるわけあるか!ただ俺は和食が食いたいと言っただけだ!!」





卍丸に学ランの胸倉を掴まれ、影慶は後先考えず叫んだ。




「んだとこら〜〜〜〜!!!」

「ほう、つまりこれは貴様リクエストというわけだ」




もはや夕食どころではない。

は三人の様子に面食らって、羅刹を見た。





「放っておけ。それよりせっかくの料理が冷める」




羅刹はに向かって小さく「頂きます」と言い、肉じゃがを口に放りこんだ。

うまい、と呟くと次々に他の料理を平らげていく。

見れば邪鬼も三人の言い争いを酒の肴に、料理に箸をつけていた。






、せっかくだ。酌をしてくれ」

「はい」

「奴等の事は気にするな。どうせいつものことよ」








正直者が馬鹿をみる、その様子を横で見ていた羅刹はふとそんな言葉が脳裏をよぎり、つくづく不幸なやつだと影慶に向かって合掌した。



面白い夜だ、と邪鬼はが注いだ酒を上機嫌で煽った。