宛がわれてた部屋はベットと小さな机があるだけの質素なものだった。 けれど掃除だけは行き届いているようで、埃一つ見当たらない。 命を狙われている。 なんとも現実味のない出来事に、ため息すら出なかった。 静遠縁である江田島が突然の元へ訪れたのはわずか三日前のことである。 突然の訪問、突然の言葉。 も両親もただただ驚くばかりであったが―――江田島の言葉には頷かざるを得なかった。 あの藤堂兵衛が、動き出したというのだ。 屈強な軍人・武道家ばかりの江田島の親類にとって、が唯一のアキレス腱であることは明白だった。 その為か、幼少の頃は江田島の友人である王大人の元で修行し、また医学を学んだである。 事態をいち早く察し、江田島の言葉を信じ、多少の戸惑いはあるものの男塾へやってきた。 それは己の腕を信じていたから。けれどその自信は今はもう無かった。 甘かった、つくづくそう思う。 あの戦士達の前では本当に、自分はただの女でしかない。 力で押されれば適わない。この分では藤堂の刺客も同様だろう。 赤石・邪鬼、この二人に最初囲まれた時も恐怖で身体が動かなかった。 対峙しただけでわかる、なんて、強い氣。 手荷物を置いて、ベットに身を放り投げる。 柔らかいベットの上に身を沈め、自分の手をじっと見つめる。 今、自分に何が出来るだろう。 江田島は既に動き始めていた。 敵の動きを探る為、日本を出てしまった。 今や頼るべきは自分のみ。 「」 控えめなノックの後聞こえたのは影慶の声だった。 はい、と返事をして扉を開ける。 「疲れてはいないか?」 「いいえ・・・・どうかしましたか」 「なに、卍丸が煩くてな・・・・腹が減ったらしい」 遠慮がちに言う影慶に、はくすりと笑った。 屈強な体躯に似合わない優しさを持つ影慶は安心感を与えてくれる。 「分かりました、何かリクエストはありますか?」 「いや・・・俺は・・・」 「中華がいいでしょうか」 中国出身者が多いと聞いていたので、なんとなくそう言うと、 「俺は和食が好きだが」 と照れくさそうに影慶が頭を掻いた。 男塾一日目の晩が、静かにくれようとしていた。 |