ひらり、と闘場に中国闘着に身を包んだ少女が舞い下りる。

一つに結わえられた長い髪とリボンが風に揺れた。









誰もがその美しさに息を呑む。














天女

















「ふ、まさかこの死闘に女が参加しているとはな」

「・・・・・・・・」

「俺の名は宝竜黒蓮珠のひとり張鳳!!女と云えどこの戦いにおいて容赦はしない!!」

「もちろん、遠慮は無用です」

「ふっ、いい度胸だ。思い知るがよい、完成された黒蓮珠の殺人技の恐ろしさを!!」






対峙した男は背中から武器と思われる奇妙なものを取り出した。

それは一見してテニスラケットのようだ。

構えを取る男に対して、は微動だにしなかった。



「だ、大丈夫なのかあの女・・・・・」

「ああ、とてもじゃねぇけど出る幕じゃねぇ」



虎丸と富樫が心配そうに闘場を見守る。

そして次の瞬間、張がとげのついた硬球をそのラケットで目掛けて打ち込んだ。




ひらり、



がその硬球を小さな動作でかわす。

だが硬球は時間が経つにつれ数が増し、に襲い掛かった。






「仕方ありませんね・・・・・」






はそう呟くと、硬球をかわしながらスカートのポケットから扇を取り出した。

金色に梅の花が描かれたごく普通の扇。

バチンと音を立てそれ開くと、それを胸の前にかざす。




「なんの真似だ!!奥義硬打無限球!!」



張が残像を交えた今までで最高の球数の硬球を目掛けて放った。

は扇を構えたまま微動だにしない。




!!」




死天王が崖の上から名を呼んだ。

その呼び声に応えたように、が扇を緩慢な動きで上下に動かす。




「な!!」




硬球が張の元へ戻った瞬間、ブチっと大きな音がした。

ラケットと硬球を繋いでいたゴムが切れ、奥義で勢いを増した硬球はそのまま張の顔面に直撃する。




「ぐふっ!!」

「見ろ、富樫!!あのテニス野郎、自分の球に当たってやがるぜ〜〜〜!!」

「おう!!てめぇそんな球も打ち返せねぇなら、帰ってお嬢様テニスでもしてろやぁ!!」





虎丸と富樫が罵声を浴びせる中、屈辱の表情で男が立ち上がる。




「このアマ〜〜ぶっ殺してやる!!」

「そのままこちらへ来ない方が身のためですよ」




だがは怯える様子もなく、扇を構えた。

その冷静な様子がますます癪に障ったのか、再び張がラケットを構える。




「死ねぇ!!」





張が腕を振り被る。

その瞬間、張がその格好のまま固まったまま動かなくなった。

そしてが扇を閉じ、バチンと音がしたその時、

張は糸の切れた人形のようにどさりとその場に倒れこみ、そのまま動かなかった。






「あまり、手荒な真似はしたくなかったんですが・・・・」






は張を一瞥すると、そのまま縄梯子に足をかけた。

崖の上に登り切ると、男塾の面々が皆驚きの表情でこちらを見ている。

その中に一つ鋭い気配があることに気付き、は振り向いた。






「何か・・・・・?」

「やはり流の生き残りか・・・・・」



そう呟いたのは月光だった。



「・・・・貴方は・・・・?」

「塾長の血縁などと、偽りを申して何を企んでいる?」





月光の手が、の腕を掴む。

その力の強さにがたじろいだ。








微かに感じる殺気に、は手の中の扇を握り締めた。