小さくて、脆くて、すぐにでも壊れてしまいそうな。






けれど、瞳の奥に秘めた、強い光は






誰にも、囚われることなく。

























赤石先輩と共に突然現れた少女に、誰もが興味深々といった表情で彼女を見つめている。

おそらく俺達の太ももほどしかない細い腰に、折れそうな腕。

同じ人間なのだろうかと思わず疑ってしまうほどの、小さな存在。

それは皆が同じようで、戸惑っているようだった。

大の男達が揃いも揃って――――その様子を見て剣は思わず笑ってしまう。

伊達だけが至極冷静な目で、彼女を見つめていた。

いや、もう一人、









周囲の視線に気付いたのか、彼女は小さく会釈をし名乗った。

それにつられたように皆が自己紹介を始める。伊達すらも。

そんな中で。

月光一人だけが黙ったまま彼女を見つめていた―――見えない、はずの目で。





「月光?どうした」

「桃、いや、」

「ふふっ、早くしないと出遅れるぜ?」

「否、俺はいい」

「?」







虎丸・富樫を筆頭に彼女を囲む輪から、月光が離れた場所へ移動する。

どうやら赤石と三号生の仲裁に入りにいったようだった。




(女が苦手なのか・・・・・?)





そんな話は聞いたことがなかったが、ここに居る連中の大部分は女に縁のない連中ばかりだ。

滅多に感情を表に出さない月光のことなど、桃には分かるはずもなかった。

しかしそれにしても、挨拶ぐらいはしてもいいはずだ。

塾生は厳しい規律からもちろんのこと、とりわけ中国拳法取得者は礼儀を重んじる傾向がある。






「月光?」





月光以外の自己紹介が終わったらしく、飛燕が振り向いて月光を探していた。

月光の様子がどうにも腑に落ちない桃は伊達の肩を叩く。





「伊達」

「どうした桃」

「月光のことなんだが――――」


「いい加減にしやがれ!!」





桃が疑問を口にしようとした瞬間、遥か遠くから怒声が響いた。

ある者は驚き、ある者は平然と、その声の方向へ視線を向ける。

そこには黒い拳法着を着た男達の集団がいた。






「奴等が次の対戦相手のようだな!」

「この勝負、最初は俺がきらせてもらうぜ」


宝竜黒連珠、雷電がそう説明した後、赤石が名乗りを上げた。

そうなれば異を唱える者など居ようはずもない。

虎丸・富樫も押し黙る他なかった。だが、




「赤石さん、私に行かせてもらえませんか?」

!?」




赤石の行く先を塞ぐようにが一歩前に出た。

誰もがその言葉に驚きを隠せなかったが、赤石だけがふっ、との目を見て笑う。





「いいぜ。てめぇの実力、見せてもらおうか」



その言葉にが頷く。








影慶が、の名を呼んだ。

大丈夫、とが三号生に向かって微笑んでみせる。

それは余裕の笑みにも見えた。

カツ、と靴音がして縄梯子を下りていく。






「何故止めなかった、赤石」



咎めるようにセンクウが赤石に問いかけた。

だが赤石は目を伏せて笑う。



「何も出来ねぇ女なら、戦場に連れて来やしません」

「なんだと?」

「それは、邪鬼先輩も承知の上でしょう」



赤石がそう言って、邪鬼を見た。

一部始終を見守っていた邪鬼は赤石の言葉に頷いて見せる。





「あの娘なら大丈夫だ」

「月光?」






その言葉を発したのは、邪鬼ではなく月光だった。

月光の言葉には何か確信が在るように桃には聞こえた。





(・・・・・・・・・?)









そして。

星型の闘場では闘いが始まろうとしていた。