ごろん、と質素な床に寝っ転がる。

視界は年輪が同じ方向を向いている木の天井で埋まってしまった。

どうしたの?と私を呼ぶ貴方の声が遠い。














優しい時間
















ちゃんどうしたの?」






だらしなく床に寝そべるを見て、伊佐間が駆け足でやってきた。

手には竿とバケツ、自宅兼釣り堀屋の中でのんびりと釣りをしている伊佐間を眺めるのが日課の

けれど今日はそんな余裕もなくて、曇り空さえ眩しく感じる瞼を閉じる。






ちゃん?具合悪いの?」







本当に心配そうに、伊佐間はの額に触れる。ざらりとした冷たい手のひらが気持ちいい。

春先の冷たい風は、と共に伊佐間の身体も冷やしていたようだった。

眉を顰めた伊佐間の様子に苦笑しながら、は何度も首を横に振る。






「違うの、お腹が痛いだけ」

「お腹?」






カレンダーをちらりと横見して、伊佐間は頷いた。

口髭がむずむずと揺れる。何を言ったらいいか、分からないというように。

付き合い始めてもう随分経つの、生理の周期を伊佐間はもちろん知っている。

けれどそれに対しての言葉など、不器用で口下手な伊佐間からは出てくるはずもない。







「だから大丈夫だから」

「うん、でも・・・・」





病気でないと分かっているのだから、心配はない。

けれどそれでも愛しい恋人の苦しむ姿など見たいはずもなく。

伊佐間は開け放してあった縁側の戸板を閉め、店の入り口から入る風の通り道を塞いだ。







「一成さん?」

「今日はお終い」

「お店閉めちゃうの?でも、まだ、」

「いいの」






サンダルを足につっかけた伊佐間は小さな板を持って外へ出て行った。

カラカラと静かに引き戸を占めるその仕草は優しい。

本日閉店、という看板を門に掛けた伊佐間はすぐに戻ってきた。







「寝る?」

「お店・・・・」

「いいの」





もう一度同じ言葉を言うと、を身体をゆっくりと横抱きにして膝の上に載せた。

脇に転がっていた毛布をの膝に掛けて、お腹の上に手を乗せる。










「寝ていいよ」

「うん・・・・ありがとう」







伊佐間の手の上に、自分の掌を乗せて、はゆっくりと目を閉じた。

どうして、この人はこんなにも優しい時間をくれるのか、そんなことを思いながら。

長くてところどころ肉刺のある手のひらが、の髪をすべるように撫でていく。

二人だけの空間を守るように、時計の針だけがちくたくと音を立てていた。























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似たネタどっかで書いたような・・・・?まぁいいや