初夢は人に話さずにいると現実になると言う。




初夢は一番強い願望が現れるのだと言う。






私が見た初夢は、とても人には言えないもの。







ジンクス












「なんで・・・・あんな夢・・・・・・・」









呆然と、天井を見上げる。

嗚呼夢か、なんて溜息付いてる場合じゃない。

どうしてあんな夢見たのか・・・・






「願望・・・だけど・・・・・」





確かに夢の中で起こったソレは私の望みだけれど。

女なのにこんな夢見て私って随分はしたないっていうか・・・・





「やらし・・・・・」








今日は元旦。

彼とは初詣に行く約束をしてる。

なのに、あんな夢見て。





「どんな顔して会えばいいのよぉ・・・」







涙目になったって、落ち込んだって時間は経つ。

あっという間に準備しなきゃいけない時間になって私は急いで化粧と着替えを済ませた。

















「ああ、明けましておめでとう」

「す、すいません!!遅れました!!」





結局なんだかんだで間に合わなくて新年早々遅刻。

なのにいつも通りニコニコと笑って息の上がった私の背中を撫でてくれる。





「そんなに慌てなくても良かったのに」




新年だからかいつもとはちょっと違う綺麗なコートを着て、それでもやっぱりへんてこな帽子は被っていてそれがどうにもアンバランス。




私の大好きな人。




「じゃあ、行きましょうか伊佐間さん」













二人で他愛ない話をしながら、寂れた神社の境内を歩く。

ここは伊佐間屋からいくらも離れていない神社で人気も少ない。










「どうしたの、なんか元気ないね」

「え!そうですか?」

「うん」





なんとなく意識してしまってうまく話せない私の顔を伊佐間さんが覗き込んできた。





「その・・・ちょっとまだ目が覚めてないというか・・」

「夜更かししてたの?」

「ちょっと夢見が・・・・い、伊佐間さんは初夢とか見ました?」」





墓穴を掘ったと気付いたけどもう遅い。

あの夢しか頭の中になくて、ついついそんな話題を振ってしまった。

どうしようかと伊佐間さんを見ると、彼は少しうーん、と唸って少し笑った。







「それがね、おかしいの」

「な、何がですか?」

「夢、ちゃんとね、初詣に行く夢見たの」

「え!?」

「おかしいでしょ。初夢、もう叶っちゃった」






そう言って笑う彼に、頬が熱くなるのを感じた。



ああ、どうしようもなく。

この人に焦がれている。






「あの、伊佐間さん」

「うん」





耳元で囁いたら

貴方はどんな顔をするのだろう。








『貴方に抱かれる夢を見ました』と









少し彼の袖を引いて、私は彼の耳元に顔を近づけた。