常日頃から言われていた。






「もし浮気なんかしたら



両手足切っちゃうよ?」









もしも私が浮気をしたら〜里村紘一の場合〜











「大丈夫。僕縫合上手いから」

「そういう問題じゃないですーーー!!!」






休診日であるはずの里村医院に響き渡る悲鳴と笑い声。

ガタガタと揺れているのはベットの上で両手を拘束されている





「だから誤解だって言ってるじゃないですか!!」

「ふーん。誤解ねぇ?それじゃあこれは何なの?」





里村が指したのは太腿の付け根。

薄っすらと鬱血の痕が残っている白い肌。





「だからそれは!!何かに被れたんでしょう!!知らない間に付いてたんです!」

「普通こんな所被れないよ。どんな状態だったていうの」





そう言って長い指先が赤い箇所を辿る。

確かにそこは普通なら一目になど触れない部分で。

だからと言って浮気など身に覚えのあるはずもない。





「まぁいいや。とりあえず約束だったしね」

「約束・・・って・・・?」

「言ったでしょ。もし浮気なんかしたら両手足切っちゃうよって」

「ほ、本気ですか!?」

「・・・・・・・」

「なんでそこで黙るんですかーーー!!」








不自由な両手をどうにかしようとしても、医療用の拘束具はビクともせず。

どうしてこの人はこんなにもメスが似合うのだろうと思っている場合じゃない。








「ねぇ、。このまま僕に手足をちょん切られるのと、僕の言う事素直に聞くのどっちが良い?」

「そ、そりゃもちろん・・・・言う事聞けば赦してくれるなら・・」

「ふーん。そうね。じゃあ何してもらおうかな」

「(しまった!!)」






そう思っても後の祭り。

何やら楽しそうにぶつぶつとぼやいている里村に悲痛な叫びは届かない。






「とりあえず、ここの器具使って悪戯されるのとクスリ使うのと自分で全部するのどれが良い?」

「なんですか、それは!!」」

「一度やってみたかったんだよね。せっかく医者になったんだし、色々良さそうな道具あるしさ。
クスリはね、媚薬みたいなもの。この間司君から買ったの。知ってるよね、司君。
まぁ、最後のは―――偶にはから誘って貰いたいかなって」

「医療用具をふしだらな事に使わないで下さい!!
どうして媚薬なんてものが必要なんですか!
大体最後のは絶対無理です。私は娼婦じゃありません!」

「その初々しさは大事にしたいんだけどねぇ」





うーんと小首を傾げてもこの状況じゃ可愛くなんてない。









神様助けてと。





天に祈るしかなかった私に。






「じゃあやっぱりクスリ使ってみようか」






と爽やかな笑顔で言い放った彼に声にならない声が上がったのだった。