「僕、これでも怒ってるんですよ?」 「そんなの見りゃ分かるっての・・・・」 頭の上で手錠掛けられて、ベットに押し倒されてれば嫌でも分かるって。 もしも私が浮気をしたら〜益田龍一の場合〜「で?なんで怒ってんの?」 「わかりません?」 「全然」 只今大ピンチ。 何故か元刑事である彼氏の手錠で自由を拘束され、ベットに貼り付けられてます。 部屋はベットサイドの灯りのみで薄暗い。 断言してもいい。 彼はこの状況に酔っている。 「本当に分かりません?」 「だから分かんないって」 「しょうがない人ですねぇ」 と言いつつ首元に顔を埋められた。 ガリっと音がして、鋭い痛みが走る。 「龍一!!」 「なんだか吸血鬼みたいな痕が付いちゃいましたねぇ」 「いい加減にしないと怒るよ!」 「だから怒ってるのは僕ですってば」 口元は緩めながらも目は笑ってない。 多分、首には龍一の八重歯が刺さった痕が残ってるんだと思う。 その痕は指でなぞりながら、ケケケと笑う。 どうやら本気で怒っているらしい。 「・・・・・・本気で心当りないんだけど」 「あれ?じゃあこの間の日曜のアレはなんだったんですかね?」 「日曜・・・・・、あ」 「あ、やっとわかりました?」 「あれはただの打ち合わせで・・・」 先週の日曜は会社の打ち合わせで取引相手と食事したのだ。 そしてその取引相手の社員に誘われ、バーへ行った。 「打ち合わせでどうしてあんな時間まで二人っきりで飲んでるんです?」 「それは・・・・でもちゃんと断わったし!!」 「ってことは口説かれたんですね?」 「うっ!!」 「元刑事馬鹿にしちゃあいけませんねぇ」 再び舌が傷痕をそろりと舐めた。 ちゅくっと音がして吸われる。血が滲んでいるようで痛い。 吸われる度にびくりと反応する身体を楽しんでいるように龍一は首筋から離れない。 「ただこのままスるのも面白くないなぁ。どうしようかさん」 「と、とりあえず手錠外して?」 「却下。先にメイド服でも着せておくんだったなぁ」 「待て待て待て待て!!」 「うーん。なんかいい案ありません?」 「あるか!!」 上に乗ってきた龍一を思い切り足で蹴飛ばす。 けれど寸前で受け止められてしまって、右足を掴まれた。 そのまま強引に足を開かれて、スカートの裾が捲れる。 日の光に当たらない白い太腿の付け根部分にまた噛み付かれた。 「痛っ!」 「このまま噛み傷全身に付けちゃいましょうか。 キスマークなんかよりよっぽど長持ちしますよ?」 「や、やだ!!」 「僕ァ、嫉妬深いんですよ。知ってたでしょう?」 さっきと同じように噛み傷を吸われた。 本当に血を吸われているような感覚に背筋がぞくぞくする。 脊髄の痺れるような痛みに気を失いそうになる。 「僕のこの記憶、あのおじさんが見たらなんて言うでしょうね?」 そう言って楽しそうに笑う男の声に、手錠の音が虚しく響いた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ポイント■益田は状況嗜好(徒然・風参照) |