野次馬性質の人間というのは





どうしてこういう時ばかり霊圧を消すのが上手いのか。










僕と君と野次馬と














二人の部下が立ち去った後、狛村は一人市丸を探していた。

市丸からの手紙は至ってシンプルなもの。


『七番隊隊長さんへv

奥さん僕が貰ったでvv』




どうせ市丸の悪戯だろうが、この様子だとが市丸の元へいるのは間違いないだろう。

今朝のこともある。急ぎ三番隊に向かうとそこに市丸はいなかった。

恐らくは狛村が来る事を予測していたのか、恐縮した三番隊平隊員が市丸の不在を告げる。






「何処へ行ったか分からぬか?」

「は、はい!吉良副隊長は四番隊へ向かったようですが・・・」

「吉良か・・・」





元々手紙を持ってきたのはあの男だ。

ならば市丸との行方も知っていよう。





「邪魔をした」





急ぎ足で四番隊へ向かう。

途中の九番隊前で友人と出て行った部下達が目的の人物を囲んでいるのに気付いた。





「・・・・・・・・これは、どうした」






吉良は確かに四番隊へ向かっていたようだ。

その途中の九番隊で恐らく射場達に捕まったのだろう。

そこまでは良い。

問題は吉良の今の状態である。





「たたた、助けて下さい!狛村隊長!!」

「どの口下げてほざくんじゃ、イヅルゥ!!」

「手前ェ、いい加減吐きやがれ」

「市丸には僕から上手く言っといてあげるよ」





吊し上げ、というのはこういう事を言うのだろうか。

文字通り、毛虫のように屋根から吊るされている三番隊副隊長。






「狛村、奥方は見つかったかい?」

「否・・・・儂も吉良に市丸の居場所を聞こうと思っていたのだが」

「だ、そうだよ、吉良君」

「ぼ、僕は本当に知らないんですよ!!最初は三番隊の執務室でお菓子を召し上がっていましたが、その後何処へ行ったのかは!!」

「やっぱり奥方は三番隊に居たんじゃねぇか!!」




檜佐木が吉良の胸倉に掴み掛る。

狛村はそれをやんわりと静止て、射場に吉良を下ろすよう目で合図した。

渋々といった感じで頷いた射場が吉良を床に下ろす。







「吉良、市丸に伝えろ・・・・悪ふざけに付き合うつもりはない。
夕刻までに妻を帰せば手紙の件は不問に処す。
だが刻限を過ぎても帰らぬ場合は、それ相応の覚悟をして貰うとな」



少しばかり霊圧で押せば、吉良の顔色が変わる。


「わ、わかりました・・・そのように・・・」


萎縮した吉良は一礼するとそのまま走り去って行った。

その姿を目で追ったまま、射場が異を唱える。



「お言葉ですが・・・すぐにでも奥方を迎えにいった方がよろしいかと」

「俺も・・・・そう思います」



檜佐木も後に続いた。



「つまらぬ事に時間を割く暇は無い。とて無理矢理連れ去られたわけでもなかろう」



そう言うと、東仙がそれはもう大袈裟に溜息を付いた。

何事かと目をやれば、笑いながら



「やれやれ、狛村は女心というものがわかってないね」

「なんだというのだ」

「今朝喧嘩をしたんだろう?射場君から聞いたよ。
恐らくは市丸が誘ったんだろうけど、ついて行ったのは奥方の意思だ。
それがどういう意味だが分からないかい?」



諭すように言う東仙はやはり楽しそうだった。

袈裟を取って、直に友人の顔を見る。



「奥方は君に迎えに来て欲しいんだよ」





東仙が言うと、射場と檜佐木がそれに頷いた。

分かっていないのは自分だけどいうことなのか。






「女心か・・・・・・」






人の心さえ知れぬのに。

女心だとわかるはずもない。







「ならば探すか・・・・・」


「その必要はありませんよ」






狛村の言葉に被さるように現れたのは、姑こと卯の花烈。






「こんなこともあろうかと、偵察隊を放っておきました」




にっこりと笑っている姿とは別の姿があることを今では誰もが知っている。

その姿に狛村は。






この分だと寝所も覗かれているかもしれんな・・・・

と冷や汗を流した。