「銀ちゃん、銀ちゃん、大変アルよ!ワタシすごい拾いモノしたアルね!!」 「あ〜〜ん、なんだよ、酢昆布でも落ちてかぁ?もっと金になるもん拾ってこいこのヤロー!」 「何言ってるアル!金より酢昆布の方が価値アルね!じゃなくて、これ見るヨロシ!!」 「あん?・・・・・・・・あ?え〜〜と、ど、どちら様で?」 「新選組の原田ってもんなんだが・・・・ここ、どこだ?」 うららかな春の午後、ではなく淀みきった曇り空の仕事がないない続きの腹が減った月曜日。 何処かへ出掛けていた神楽がひょっこりと戻り、その手は見慣れない服装の男の手が握られていた。 「おいおい、神楽ちゃんにはまだそういうのは早いでショ?銀さんだってまだ心の準備が出来てないよ、っていうかあれ?真撰組の原田って確か大柄のヒゲ面のハゲじゃなかったっけ?」 「なに言ってるアルネ!このイケメンの何処がハゲアルか!眼科行ってこいよこのヤロー!!」 「おいおい、駄目だぜ。女の子がそんな言葉遣いしちゃあよ」 「左之助がそういうなら気をつけるアル」 「おう、イイ子だな」 「え、ちょ、神楽ちゃん、何素直にこの人の言うこと聞いちゃってんの!?一度だって素直に銀さんの言うこと聞いたことあったっけ!?イケメンだから!?イケメンだからか!」 寝そべっていたソファーから飛びあがると、腹の上に置かれていたジャンプがパサリと床に落ちた。 それを原田という男が拾い上げ、珍しそうにページをパラパラと捲る。 銀時よりも少し背が高く、和装をアレンジしたような見慣れない服に腰には刀を下げている。 ・・・・・・・・・・・刀? 今の世の中、刀の所持が許されているのは確かに真撰組だけ。 もしくは廃刀令おかまいなしの攘夷志士だ。 「おいおい、兄さん、本当に真撰組か?あんたみたいの見たことないんだけど」 「間違いなく新選組十番隊組長、原田左之助だぜ?あんたこそ新選組を知ってんのか?ここは京じゃないようだが・・・・」 「左之助?なんだよ、あのハゲの兄弟かなんかか?いや、それにしちゃあ似てねぇよな。いっそハゲが憐れなくらい」 「俺には兄弟なんていねぇが・・・・あんたなに言ってんだ?」 ジャンプをテーブルに置くと、困惑したように原田が家の中を見回す。 どうやら見たことのないものばかりらしく、あれそれと神楽に訪ね、神楽は神楽でその問いかけに律儀に答えていた。 (妙なやつだな・・・・にでも聞いてみっか?) 真撰組唯一の女隊士、を思い浮かべ携帯を取り出す。 敵対しながらも、時に協力体制を取る真撰組とは奇妙な縁で結ばれている。 その隊士達の中ではが最も銀時達と親しい。 そう思い懐の携帯に手を伸ばす。 すると突然原田が刀に手を置き、居合の姿勢を取った。 「おいおい、なに警戒してんだよ。別に攻撃なんかしねぇよ」 武器を取り出すと勘違いされたのか、にわかに殺気立つ原田に向かって、へらりと笑いながら懐から手を出すと、携帯を振ってみせる。 「あ、いや、悪ィ・・・そういうつもりじゃなかったんだが・・知らねぇ場所だからな。警戒して、つい」 そう言うと原田もまた柄から手を放し、姿勢を元に戻す。どうやら悪い奴ではないらしい。 神楽は酢昆布をかじりながら、二人を交互に見つめた。 「銀ちゃん、左之助は家が分からないらしいアル。迷子アル!!」 「迷子って真撰組なんだろ?屯所まで連れて行ってやればいいじゃないの」 「いや、それがどーも、そうじゃねぇらしいんだ。俺もよく分かってねぇんだが」 そう言うと、原田は腰から刀を抜き、床に正座し姿勢を正した。 真面目な話をするのだと察し、銀時もソファーから降りて床に直接胡坐をかく。 すると原田は此処へ来るまでの道のりを静かに語り始めた。 「で、要するにだ。原田君のお仲間の二人が行方不明になって、それを探している内に気がついたら原田君まで知らない場所に来てしまったと。 そこで神楽と会って、真撰組の屯所まで行ったが、そこは原田君の居たしんせんぐみではなく、仕方なく引き返してきて、今、此処にいると」 面倒くさそうにボリボリと頭をかく銀時を咎めることもせず、原田は大真面目に頷いた。 「俺がいたのは『新選組』だ。だがここのしんせんぐみは『真撰組』だって言うじゃねぇか」 「で、君はニコ中のマヨラーもドS王子もゴリラも知らない、と?」 「ああ。というか俺にはあんたが何言ってんのか、さっぱり分からねぇんだが・・・・」 「銀ちゃん、左之助は嘘ついてないアルよ!可哀想アル!困った人助けるのが万事屋の仕事アルよ!!」 「いやいやほんとうちの大食い手懐けてくれちゃってどうしよう、これ。というかそれこそ困った人助けんのが警察の仕事でしょーが。わざわざ屯所まで行っといてなんで引き返してきちゃったの」 「なに言ってるアル!あんな税金ドロボーのむさ苦しい連中のとこなんか言ったら、左之助までゴリラになっちゃうアル!銀ちゃんはそれでいいアルか!イケメンが減ってもいいアルか!」 「別にいいよ銀さん困らないよ、つーか、それが本音じゃん。男は顔じゃないんだよ?ハートだよ?」 「ケッ!なに甘っちょろいこと言ってるアル!人間は所詮見た目アルよ!見た目じゃないとか言っといて結局美人選ぶのが男って生き物ネ!」 「そういや神楽、最近昼ドラハマってたよね?それヒロインのセリフだよね?」 「うず子は一生懸命頑張ってたアル!それなのにあんなケツ振ったメス牛を選ぶなんてどうかしているアルよ!!」 「違う違う、話が逸れてるから。それで原田君、君が居たところじゃ天人はいなかったんだ?」 銀時が問うと、原田は神妙に頷いた。 自分が妙な場所に来てしまったと気付いたのが、空を飛ぶ宇宙船と天人を見たのがきっかけだったらしい。 とにかく誰かに助けを求めようとして、一番最初に出逢ったのが神楽だったというわけだ。 (まぁその神楽も天人なんだけどね・・・・・) というのは口には出さないでおく。 本人の申告がない限り、地球人と天人の区別がつかない者も数多くいる。 わざわざ言うこともないだろうと左之助にじゃれつく神楽を見つつ、手の中の携帯に目を落とす。 (うちじゃ面倒見れないしなぁ・・・これ以上食いぶちは増やせらんないし) 「あのさー、とりあえずちゃんに連絡するけど、いいよね?」 「の姉御に連絡してどうするネ?」 の名前にいち早く神楽が反応する。 二人・・・いや、妙を含んだ三人は暴力女同士気が合うのか、仲が良い。 「原田君引き取ってもらうんだよ。うちじゃ飼えませんからね」 「えーー!なんでアルか!大丈夫アル!糖尿と眼鏡のご飯減らせばなんとかなるネ!!」 「うちのエンゲル係数あげてんの、間違いなく神楽だから。俺らの飯なんて雀の涙ほどだっつーの」 「嫌アル、嫌アル!姉御に渡したら、左之助喰われちまうネ!!」 「ああ、まぁちゃんならやりかねないけど・・・男としてはオイシイんじゃないの、一応ちゃん美人だし。むしろ羨ましいっていうかー、銀さんもご相伴にあずかりたいっていうかー」 「銀ちゃん、やっぱりの姉御狙ってたアルね!!ヒドイアル!不潔アル!」 「とか言いながら、原田君の胸板触るの止めなさい。とにかく連絡するからね」 そう言いながら手元の携帯のボタンを押すと、原田の不安そうな視線に気付いた。 「ちゃんってのは真撰組の監察方。あそこむさ苦しい血の気の多い奴ばっかりだからさー、あんまり人の話聞くやついないし。とりあえずちゃんなら話くらい聞いてくれるから、心配しないでいいよ」 「監察方・・・女なのか?」 「うん?そうだけど?」 「女がいんのか・・・女が刀を持つってのはあんまりいい気はしねぇが」 原田の言葉に銀時は目を細める。 女は女らしく生きるべきだ、というのは悪い考えじゃない。 だが、本人を知らずにそれを言うのはいささか軽率だ。 「それ、ちゃんには言わない方がいいねぇ。誇りと信念を持って刀を手にしてる相手にそれを言っちゃあ侮辱でしょ」 「や、そんなつもりじゃ」 「まー、原田君に悪気はなくてもね。うちの神楽だって舐めると痛い目見るよ?」 「そーアルよ!ワタシ歌舞伎町の女王アルヨ!舐めるとしょっぱいアル!!」 「そりゃ酢昆布の成分でしょーが。ま、とにかく連絡するから」 そう言って今度こそ目当ての番号にコールする。 1コール、2コール、と待って、10コールしたところでようやく受話器が反応をした。 『もしもし、万事屋の旦那?』 「あーちゃん?あのさ、ちょっと今困ってんだけど」 『えー、自分でなんとかしなさいよ、なんのための万事屋なの?自分を助けられずに他人を助けられてると思ってんの?』 「いやいや、そう言わずに話だけでも聞いてちょうだいよ。イケメンだよ?すっごいエロいオーラかもしだしてるよ?ちゃん大好きなイケメンが我が家に来てるの」 『へーそー。だから?』 「え、無反応なの?そうなの?いつもなら喰いつくじゃん。高杉にすら黄色い声上げて多串君に怒られてたじゃん。なんで今日に限って?」 「私、心に決めた人がいるの。山崎さんがいれば水〇豊だってもういらないわ」 「ちょ、なにそれ銀さん聞いてないよ!つか『山崎』さんはあんたでしょーに!!」 『さよなら、銀さん。結婚式には三人揃って招待してあげるから』 ツー、ツー、ツー 「え、ちょぉおとぉおおお!!切りやがった、このヤロー!!!!」 イケメンとエロは必ずしも
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