「とりあえず目標はいかに危険を伴わず土方の野郎を失脚させられるかってとこなんですがねェ」 「ふーん。僕なら正面から斬り合う方が性に合ってるけどなぁ。そんなに強いの?こっちの土方さん」 「まぁ腐っても副長ですしねェ。ま、俺の方が強ェことには違いねぇが、いなきゃいなきゃで書類仕事が片付かねぇから、殺さないで雑用だけやらせられるようなポジションに陥れられるのがベストでぃ」 「なるほどね。じゃあとりあえず謀反を企てた罪で失脚を狙うってのはどう?言い逃れの出来ない証拠を適当にでっちあげてさ。それで土方さんが疑われた時に総悟君が庇ってあげたりなんかしたら、君の株も上がって一石二鳥じゃない」 「さすが総司君。よし、それでいきやしょう」 「てめぇら、それ一番聞いちゃなんねぇ人間に丸聞こえってのをよく覚えておけよ、コラァアア」 沖田という名前の男は破壊衝動を起こさずにはいられないはい、皆さんこんにちは。山崎退です。 誰もナレーションしやがらねぇんで、俺が担当です。 沖田隊長が面白半分でいじくりまくったタイムマシンから、新選組の沖田総司と山崎烝と名乗る人物が現れて半日が経とうとしています。 どうやら彼らは俺達の住む江戸とは全く違う江戸から来たようですが、それが果たして本当の話なのかは誰にも判断つきかねます。 けれど彼らがここへ来てしまった原因は120%沖田隊長のせいなので、タイムマシンが直るまで真撰組屯所で身柄を保護することになりました。 そこまでは真撰組としては別段問題はないんです。元々大所帯、食客が二人増えたところで大したことはありません。 しかし別の問題が一つ・・・いや、二つ。 「じゃあ俺はそろそろ巡回に行きやすが、総司君も一緒に行きやすかい?なに、巡回なんて適当に気に入らねぇ連中を片っ端からぶっ飛ばす楽な仕事で」 「行く行く。じゃあ何人殺れるか、競争ね」 「山崎さん、山崎さん、私オイシイ甘味屋さん知ってるんです!行きましょう!奢りますから!むしろ貴方の一生を私に奢らせて下さい」 「あの、さん、お仕事があるのでは?」 「いやだ、仕事なんて、山崎さんと私の逢瀬の前には小さな問題ですよ!ね、行きましょう」 「しかし・・・、俺は十四郎さんに呼ばれていますので」 「総悟ォオオオオ!今すぐ土方暗殺プランR発動ォオオオオ!!!」 「お、ようやくも本気になりやしたかい。よし、じゃあまずは土方の野郎の髪の毛をごっそり用意・・・」 「だから丸聞こえだって言ってんだろうがヨォオオオ!!つーか、まず副長室に集まった理由から開示しろ!!嫌がらせか!?嫌がらせなのか!?」 ・・・・・これです。 沖田総司と沖田総悟、名前の似ている二人はどうやらS度も似通っているようで、会ってすぐに気が合ってしまった模様。 二人して副長室に集まってこともあろうに副長暗殺会議。やはり一人より二人の方が楽しいのか、心なしか沖田隊長も楽しそうです。 そしてもう一つか俺の監察方の上司、真撰組の姉御こと山崎。 そう、お察しの通り俺の実姉です。つまり彼女も『山崎』なんですが、どうやらその姉は同じ山崎を名乗る烝さんに一目惚れしてしまったようで・・・ 「姉さん、その・・・烝さんが困ってるから離して上げた方が・・・・」 「やだ、退!そんな他人行儀な呼び方!今日からお義兄さんと呼びなさい」 「いやいやいやいやいや、いくらなんでもそりゃねぇよ!?っていうか姉さんちょっと局長入ってるから!ストーカーになりかけてるから!!」 「なに言ってるの!?せっかく山崎さんが自ら『山崎』を名乗ってくれてるのに、その心意気を無駄にする気!?このご時世に婿入りの覚悟までして下さるなんて!!」 「違うよ!?烝さんは最初から『山崎』姓なんであって、別に姉さんの為に苗字変えたとかそんなの微塵もねぇよ!?何ストーカーゴリラも真っ青なハッピーな勘違いしてくれちゃってんの、この人!?それじゃなにか!?全国の『山崎』さんは皆親戚か!?」 「あれは私に振られた憐れな男達よ・・・・放っておいてあげなさい・・・・」 「ぎゃああああ!!!なにその勘違い!?いっそのこと清々しいよ!?あんた全国の山崎さんはみんな自分に惚れてると思ってんの!?帰ってきて姉さんーーー!姉さんが遠すぎるよ!!」 「さんも退君も、少し落ち着いて下さい。それから十四郎さんも、今お茶でも淹れますので」 「す、すいません、お義兄さ・・・・あ、いや、烝さん」(←つられた) 「すまねぇな山崎。いや、地味じゃない方?うちのがジミ崎だから・・ハデ崎?・いや、・・別に派手じゃねぇしな」 「十四郎さん、普通に呼んで下されば結構ですから」 そう言って静かに微笑んで、烝さんがお茶を淹れてくれました(なんと俺にまで!) いっそのこと本当にこの人が兄で、姉が他人なら良かったのに・・・・・。 そう思わずにいられないのはどうやら俺だけではないようで。 「よし、烝。お前は此処にいる間、俺の補助として働け。出来るな?」 「世話になる身です。喜んでお手伝い致します」 「山崎、あ、地味崎の方。お前はあのW沖田を抑えとけ。絶対に破壊活動だけはさせるじゃねぇぞ」 「ふ、副長ォオオオ!!何一人だけ常識人手に入れて非常識人を俺に押しつけようとしているんですか!?俺一人なんて無理に決まってるでしょう、見て下さいよ、あの悪魔と妖怪が手を組んでしまったような最悪のタッグ!!!」 「そうですよ、副長!!なんで私の山崎さんを独り占めしようとしてるんですか!?はっ!?まさか副長私のライバルですか!?いくらBLが流行ろうと私は男同士なんて認めませんよ!!その組み合わせオイシイなんて思わないんだからね!!!」 「山崎ィ、てめぇいつから俺に意見するようになったんだ?ァアア?それに、てめぇ涎垂らしながら何ふざけたこと言ってんだよ、その手のカメラはなんだ、コラ!!」 姉さんの手にあったカメラが副長によって奪われる。 ああ、胃が痛い・・・・・。 元々沖田隊長一人でも手を焼いているのに、その上もう一人の沖田さんまで増えて、姉さんまでストーカー紛いのことを始めて。沖田ってなにか。破壊神の別名かなんかなのかっ・・・・・・てぇええええええ!!! 「なにやってるんですか、そこぉおお!!!」 「なにって、総司君にバズーカ砲の打ち方を教えているだけでぃ」 「ちょっとぉおおお!!じゃあなんで、バズーカこっち向いてんの!?ねぇ、ちょっとW沖田ぁああ!!」 「えーと、まずここの取っ手を引くんだよね。で、ここをこうして・・・・・」 「そうそう。それで目標を土方の野郎にセット。さすが、総司君は筋がいいぜィ」 「ギャアアアアアア!!!逃げてぇえええ!副長逃げてぇええええ」 「はい、ドッカーン」(←総悟・棒読み) ドッカーン パラパラパラ、目の前に木の破片が降り注ぐ。 確認するまでもない。副長の間横には見慣れた大きな穴。 「「いえーーい★」」 そしてハイタッチを交わすW沖田。なにそのワールドカップみたいなノリ!!! 「てめぇら、上等だぁあああ!国中の沖田という沖田を抹殺してやるから覚悟しやがれぇえええ」 予想通り瞳孔が見開いて激昂する副長。 「は!?そういえば大丈夫ですか!?烝さん!」 この事態にしばし思考が停止したものの、沖田隊長の破壊行動に慣れてる真撰組の連中は割と冷静だ。 だが問題は烝さん。彼はこんな異常事態に慣れていないだろう。怪我はしていないかと瓦礫の中を見回す。 すると意外にも烝さんはテキパキの周囲の隊士に指示を出していた。 「とりあえず瓦礫を片付けましょう。それから怪我人は名乗り出て下さい。自分が処置します」 「「「了解!!」」」 「あ、あの烝さん・・・・」 「ああ、退君、怪我はしていないか?いつもこのような場合どうしているか教えて欲しい」 「ええと・・・とりあえず大工呼びます。あ、あとあの・・・!」 「どうした?」 「兄さんと呼ばせて下さい。無論姉さんとは別の意味で」 「それは構わないが・・・急にどうして?」 「だってだって・・・・この異常事態でそこまで冷静に対処できるなんて、そこに痺れる憧れるゥ!!烝さんも監察方なんですよね!?是非俺に指南お願いします!!兄さん!」 「そこまで言われてると若干照れるが・・・そうだな、俺に出来る事ならば出来る限り協力しよう」 「ありがとうございます!見返りは姉さんの魔の手から助けるってことで」 「こちらこそよろしく頼む」 増えたのは二人の居候。けれど面倒事はその100倍。 故郷の母さん、父さん、元気ですか? 俺にはもう一人尊敬できる「兄さん」ができました。 だからお願いです。 「ちょっと退ゥウウウ!あんたなに、抜け駆けしようとしてんの!?退のくせに山崎さんと並ぼうなんて100万年早い上に需要がこれっぽっちも無ぇんだよぉおおお!!!」 姉さんそっちで引き取ってくれませんか。 「「はい、ドッカーン」」 「総悟ォオオオオ!!!! 総司ィイイイイ!!!!」 追伸:沖田という名前に気を付けて下さい。奴等はきっと破壊神の化身です。 |