手には色とりどりの輪ゴムとファッション雑誌。

うん、と自分自身に気合いを入れて子供を膝の上に呼ぶ。

呼ばれた子供は素直に膝の上に乗って、私を見上げた。









みつあみときみと











「アウ”?」

「エン、いい子だからちょっとだけ大人しくしててね」



子供に言い聞かせながら、子供の髪にくしを通す。

そう、せっかく子供服を手に入れたのだから、このまま今日はエンを外へ連れて行こうと思うのだ。

けれどそれにはまだやらなければならないことがある。それは、エンの髪を整えること。

あのターザンのような伸び放題の髪の毛は子供だとしても少々頂けない。

けれど髪の毛を切って額を見せるのはエンが嫌がる。

どうすればいいかと色々考えた末、あることを思いついたのだ。





「ええっと・・・・・」





手元にある雑誌の開かれたページには、レゲェのダンサーのような格好をしたモデルが並んでいる。

いわゆるB系というやつだ。

モデルのほとんどは髪が綺麗に編み込みされていたり、細かくパーマがかけられてたりしている。

アフリカ・南米系に見えるエンならば、きっとこういうのが似合うのではないかと思って挑戦してみることにしたのだ。





「編み込みってあんまりやったことないなぁ・・・・とりあえずみつあみでいいのかな?」




あまり器用だと言えないは、それでも懸命に雑誌の真似をしながら、細かく小さくみつあみを編んでいく。




・・・・・ンン、」


「ああ、ダメだって、動かないで、エン」



大人しくしていることが苦手なエンはもぞもぞと腰を動かす。

が、頭をきっちり抑えられているため、動くことが出来ない。

鏡もない状態で、己が何をされているのか分からずに、エンは絶えずもぞもぞしている。




「エン、もうちょっと大人しく、ね?」

「ゥゥ”」



唸る子供の額やほっぺに”ちゅう”をして宥めながらの慣れない作業。

これは長期戦だなと覚悟を決めて、手をテーブルの上の袋に手を伸ばす。

手に取ったのは、服をくれたご近所さんの差し入れの子供用の棒付きキャンディー。




「はぁい、エン、あーん」

「アーン」


ぐずっていても、そこは子供。素直に口を開く様子は何処の国の子供も変わらない。

キャンディーをもごもごと口に入れると、その甘さが気にいったのがエンの動きがぴたりと止まる。



「美味しい?噛んじゃ駄目だよ。舐めるものだからね」

「ン”」


子供が飴に気を取られている内が勝負だ。

口いっぱいに飴を頬張るエンを眺めながら、再び手を動かす。






「うん?なぁに?」



ようやく右半分が終わったところで、エンがまだもぞりと動いた。

飴がなくなったのかと思いきや、棒付きキャンディーはまだそれほど減ってはいない。

飴を握った手がすっとこちらに伸ばされた。




、アーン」




あーん、と自分の口を開いてこちらに飴を差し出すエン。

飴とエンを交互に見て、ほわりと心が熱くなる。



、イッショ」

「一緒に食べてもいいの?」

「ガ!」



美味しかったから、一緒に食べようと言ってくれる優しい子供。

言葉が拙くて、けれど懸命に何かを伝え、応えようとしてくれるかわいい子供。

は飴をペロリと舐める。



「美味しいね、エン」

「オイシ!」



無邪気に笑うエンに最初に会った時の怯えは見られない。

願わくばこのまま一緒にいられたらと思う。それはあまりに無謀な願いだけれど。



が飴を口にしたことに満足したのか、また自分の口に飴を含み、しばらくしたらに飴を差し出す。

その遣り取りは飴がなくなるまで続けられた。












「完成ーーー!」



そして作業が終わった時には、すっかりエンはの膝で寝入ってしまった。

子供の寝顔と綺麗に編まれたみつあみには満足げに笑う。

さながらプチドレットと言ったところだろうか。

最後の仕上げに用意しておいたバンダナを額に巻けば完璧だ。









「はぁ・・・・疲れた」



まるで内職でもしたかのような細かい作業に、指がつりそうだ。

エンの身体をそっと畳の上に横たえて、自分もその横にどさりと横になる。

まだまだ日は暮れない。

起きたらエンと一緒に買い物に行こうと、子供の身体を抱き寄せた。
























以下トリップ後ネタばれエピソード(反転)





、イッショ」



差し出された大きな肉の塊に、の目が瞬く。

それはまるで子供の時の仕草と同じようで、思わず苦笑してしまう。


「エン、私一人で食べれるのよ?」

「イッショ」


あの時と違うのは子供が大きな身体の大人になったということだけ。

子供の頃よくしてあげたのとは逆に、今はが魏延の膝の上に乗っている。



ガブリっと肉の塊に齧り付いて、その肉をそのままの口元に持ってくる。



「あんまりお行儀良くないけど・・・・えぃ!」



魏延の歯型の隣にが齧りつく。

その小さな歯型上に、今度は魏延が齧りつく。




「一緒ね?」

「イッショ」



嬉しそうに笑う魏延にも微笑む。




「はい、エン、あーん」

「アー」



温かな蝋燭の灯りの中、その遣り取りはいつまでも続けられた。

















モデル4のドレッドの原型はさんのみつあみ(笑)