オロチが滅んだ。















絆IF物語。もしもOROCHIの世界に落ちたら 終宴











全てが終わったことを告げたのは、空や大地を被っていた闇が消え去った後の朝焼けだった。

まるで魔法のように瘴気が消えていく景色を、誰もが笑い、喜び、泣いて見つめる。

そんな中で一人、だけが何かを祈るようにじっと遥か先を見つめていた。

半蔵は非戦闘民のいるこの地区にを運び、そして消えた。

おそらくは彼も最後の闘いに赴く為に。




それから一夜が経った。眠れぬ夜を過ごしたはずの民達は、今喜びに湧いている。

やがて人々の歓喜の声にこだまするように、ザッザッ、と蹄の音が聞こえ始めた。

段々と大きくなっていく音に、怯える者は誰一人としていない。

皆が希望に満ちた瞳で見つめる先に現れたのは、この混沌を終わらせた英雄達だった。

一斉に歓声が上がる、その中で。

ただ一人の姿を認め、は小さく息を吐いた。無事だったーーー今はただそれが嬉しい。








相手にもそれが伝わったのか、馬を降りて歩み寄ってきたその人物はーーーーーー






夏候惇

周泰


















































見上げるとそこには夏候惇が立っていた。名前を呼ぼうとするや否やきつく抱きしめられて声が出ない。

決して綺麗とは言えない鎧と土臭さに包まれて、は小さく息を吐いた。





「元譲様」

・・・」

「お帰りなさませ」

「・・・・・ああ」




夏候惇の頬をそっと撫でると、その手を掴まれてそのまま引き寄せられるように口付けをされた。

それはそっと触れるだけのもの。

髭のくすぐったさと、触れた箇所の熱さに眩暈を覚えながらも拒むことはしなかった。

もう、自分の中で答えは出ているから。





「・・・すまぬ」

「どうしして謝るのですか?」

「お前を危険に晒した」

「・・・・それは元譲様のせいでは、」

「それに」

「はい」

「お前を蜀には帰せない」




その言葉に、息を呑む。

質問をされているわけではない。帰せない、とはっきり宣言されたのだ。

夏候惇の言葉にどのような答えを出そうとも、夏候惇が起こす行動は彼の中ではもう決まっている。






一瞬、エンのことが頭を過ぎる。

エンの周りは今では多くの人で溢れている。昔では考えられないくらいに。


・・・・・・・・・もう、大丈夫だよね、エン。



私がいなくても、多くの人がエンを支え、そしてその恩をエンは返すだろう。

それに二度と会えないわけじゃない。国の垣根が取り払われたこの世界ではもう国同士争うこともないだろう。

それぞれの国が、人が、力を合わせてオロチを倒したのだから。





「元譲様」

「なんだ」

「やっと・・・やっと私も曹操様にお会いできますね」



その言葉に、夏候惇は隻眼を大きく見開き、そして力強く頷いた。

どんな暗い夜にも必ず朝を来る。それを体現するかのように希望に満ちた朝日の前で、二人はもう一度唇を重ねた。




























































静かに、けれどしっかりと名前を呼ばれては顔を上げた。



そこには見るからにボロボロになった周泰が立っていた。

大きな怪我こそないが、あちこちに激しい戦闘の跡が残っている。

だが周泰は微塵も辛そうには見えず、その瞳は歓喜に満ちていた。それは普段周泰のごく身近にいる者にしか分からない変化だったけれど、確かに彼は笑っていた。






「周泰さん・・!ご無事で」

「ああ、・・・・お前も・・・・無事で良かった」


そう言って伸びてきた長い腕に体を絡め取られる。それはとても熱くて、周泰が生きて帰ってきたことを語っている。

大きな周泰の身体に何もかも包まれる。それがどうしようもなく嬉しくて、涙腺が緩むのを感じて上を見上げた。



「ふふっ」

「・・・・どうした?」

「周泰さん、笑っているな、と思って」

「・・・・そうだな・・・・」

「また、こうして会えて、本当に嬉しいです」

「・・・・ああ・・・・俺もだ」



腕に拘束が更にキツクなるのを感じて、それが嬉しくてまた泣きそうになる。

これじゃ堂々巡り、なんて思って潤んだ瞳で周泰を見つめていると、今度こそ周泰が口端を上げて笑った。

それが嬉しくてその顔にそっと手を伸ばそうとすると―――――――




「で?お前らいつちゅーするんだずぇ?」

「さっさとしろ、周泰!貴様それでも男か!!」






思わぬところから声が聞こえて二人は固まった。




「・・・・!孫策様!それに貴方様は・・・!」

「・・・孫権様・・・・」




振り向くと、二人がいたすぐ真横に孫策、それに髭の生えた青年が立っていた。

ひと目で高貴な身分とわかるその風貌の青年を周泰は孫権様と呼び、この人物が周泰の主であることを示した。

慌てては地に膝をつこうとするが、孫策に阻まれる。孫策とは何度が顔を合わせている為、彼も気安くの肩を叩いた。





「いや〜〜〜周泰、まさかの嫁さんげっとだずぇ!」

「全く・・・まさか私がオロチ軍にいる間に女を口説いていたとはなぁ、周泰!」

「・・・・そ、孫権様・・・・決してそのような・・・」



珍しくうろたえた周泰に、二人が笑い声を上げる。それは親しみの込められた笑い声でもつられて笑った。



「いやいや、いいのだ周泰。私は嬉しい。どんな女がいても妻にしようとしなかったお前がよもや蜀の女人に惚れようとはな!」

「しかもはずっと魏軍にいたからなぁ。こりゃあ、蜀と魏相手に一波乱ありそうだずぇ!!」



どうやら二人の間ではもうは周泰の妻ということで決定しているらしい。

周泰とは互いに顔を見合わせた。







「はい」

「俺と・・・・共に生きてくれるか・・・・」

「・・・・・・はい」




その瞬間、周りからどっと拍手と歓声が吹き荒れる。

祝福と喜びの声はいつまでも止むことはなく、二つの影もまた、いつまでも離れることはなかった。
































ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
誰落ちでも結局魏延が年上の義息子ってところに辿り着く(笑)