目が覚めたら、視界が色取り取りのアクセサリーでいっぱいで、

見慣れたはずの人たちが見慣れない格好をして立っていました。






・・・・・・・一体コレハナンデショウ?










たった一人の姫君へ












「あの、なんでしょうか?これは・・・・・」






目が覚めて目に映ったもの。それは、

死天王がスーツを着て、ベットの脇に立っている姿だった。

時計の針はきっかり午前8時。当然はパジャマ姿で。




「目が覚めたか、

「影慶さん、一体なんなんです?」

「すぐこれに着替えろ。出かけるぞ」

「―――――はい?」

「さっさとしねぇと置いてくぞ」

「卍丸さん・・・だからなんなんです?ていうかスーツ似合ってな・・・」

うるせぇよ。とっとしねぇと脱がせるぜ?」

「自分で着替えます!」






渡されたのは、白いキャミソールのロングドレス。

ヒールやアクセサリーも全て揃っていて、まるでどこぞのパーティーにでも行く格好のように見える。

あまりに突然のことで全く事情が読めず、嫁入り前の娘の寝室に大の男が揃いも揃って無断で侵入していたことを抗議する暇すらなく、四人はさっさと部屋を出て行ってしまった。

こうなっては着替えるしかないのだろう。

あまり化粧のしたことがないだったが、急いで着替えて慣れない化粧をする。

長い髪を上に結い上げて、ショールを羽織るとそれなりの形にはなった・・・・ような気がしたところで、バタン!と扉が開いた。





「出来たか?」

「わ!!卍丸さん、ノックして下さいよ!!」

「時間が無ぇんだよ、とっとと行くぞ」

「だから何処に!!」






抗議の声を上げようとすると、さっと手袋をした手を掴まれそのまま引っ張られるように天動宮の外へ出る。

門の前にはどう見ても高級車だと分かる黒塗りの車が一台止まっていた。



「な・・・あれ・・リムジン!?」

「おう、乗るぞ」

「あ、あれに乗るの!?」



車の前に来ると、ドアが開いてセンクウが顔を出した。

腕を引かれ、広い車内に乗り込むとタキシード姿の邪鬼が真ん中にどかりと座っていた。

隣に座れ、と眼で促されて邪鬼の隣に座る。

さすが高級車、座り心地もフカフカで、その感触を楽しむべく身体を上下に揺らしていると横から笑い声。



「面白いか?」

「邪鬼様タキシード・・・・」

「ふむ。はよく似合っているな」

「そんな・・・ドレスなんか似合うわけないじゃないですか」

「俺も似合わんか?」

「いえ・・・すごくお似合いですけど」





邪鬼は髪をオールバックにし、長髪を後ろで一つにまとめていた。

特注だろうと思われるタキシードの下からも、いかに良い体格をしているかが分かる。




も似合っている。いつもそのようにしていればいいものを」

「嫌ですよ、めんどくさい。っていうか・・・なんなんです?」

「政界のパーティーだ。塾長から護衛を頼まれてな」



質問に答えたのは、センクウだった。

広い車内には邪鬼・・センクウ・卍丸が、運転しているのは羅刹で影慶は助手席に座っている。

邪鬼は内ポケットから封筒を取り出し、それをに渡した。



「俺は元々大豪院家代表として招待されていたのだが、行く気は当然なくてな。
だが塾長に頼まれては断れんし、まぁ護衛として紛れ込むよりは招待客としての方がやりやすい」


「つまり、邪鬼様は招待客、はその同伴、俺達は邪鬼様のボディーガードとして参加するわけだ。」

「ああ・・・・それで邪鬼様だけタキシードで後はスーツなわけですか・・・」



サングラスをしてニヤリと笑う卍丸にはため息をついた。

柄が悪すぎてとてもボディーガードには見えない。少なくともモヒカンだけは。



車は走り続け、やがて豪邸の敷地の中へと入っていた。

きっと名だたる政界の人間の家なのだろうが、にはよく分からない。

まるで場違いな光景に思わずため息が出てしまう。





「なんで私も?」

「女連れじゃなきゃいけねぇんだよ、こういう宴会はよ」

「卍丸さん、宴会じゃないでしょ・・・・別に、邪鬼様なら綺麗なお姉さんの一人や二人・・・」

「そういう女は好かん」

「任務だから好みは関係ないんじゃ・・・・」

「ああ、、ほら、着いたぞ」




センクウの言葉と同時に車が止まり、ドアが開いた。

ドアの横には羅刹が立っていて、さっと手を出される。





「あ、ありがとうございます」



まるでどこぞのお姫さまのようだ・・・と思いつつも、羅刹の手を借りリムジンを降りた。

その先には本当にお城のような豪邸と赤い絨毯。




「やはり白が似合うな」

「ありがとうございます。羅刹さんもスーツ似合ってますよ・・・というかハマリすぎ」

「それは褒めているのか?まぁ、いい。パーティーの最中は邪鬼様にエスコートしてもらうんだぞ」

「え、えすこーと?」



聞きなれない言葉に思わず聞き返してしまう。

今日はどういう日なのだろう。そういえば、まだ朝ごはんも食べていない。



「お腹空いた・・・」

「パーティーだからな。美味い物はたくさん食えると思うぞ」


お腹を押さえてそう呟くに羅刹は苦笑する。

それを後ろ聞いていた他の面々も、それぞれ口を押さえて笑っていた。





「テロを企んでいる馬鹿をさっさと見つけて始末すりゃお役御免だ。は邪鬼様とメシ食って適当に遊んでろ」

「て、テロ!?大丈夫なんですか?」

「まぁ、一時間もあれば終わるだろう」



時計を見ながら至極当然のように言う影慶に、やっぱりこの人たちすごいわ・・・と感嘆する。

まぁ、せっかくのパーティーだから適当に楽しむのもありなんだろう。




「じゃあお言葉に甘えて」

「ああ、楽しんできてくれ、お姫様」



センクウはそう言って、の右頬に唇を寄せた。


「あまり食いすぎんようにな」


それに習うように、羅刹はの右手の甲に、


「本当に綺麗だぞ」


ごほん、と照れ隠しの咳払いをし、影慶は左頬に、


「ま、たまにはこういうのも悪かねぇ」


卍丸は悪戯な笑みを浮かべ、額にそれぞれキスをした。






「へ?ぇええ??」


あまりに突然のことに慌てふためくを見て、四人は声を上げて笑う。


「では、行くぞ」


邪鬼はそんなの腕を自分の腕に絡ませ、赤い絨毯の上を歩いていった。

邪鬼の腕にぶら下がるようには慌てて歩き出し、少し赤い顔で目の前の豪邸に入っていく。












「おいおい・・・あれじゃまるで親子だな・・・・」

体格の差がありすぎる二人に、卍丸は声を抑えずに笑う。


「そう言うな卍丸。それにしてもは今日がなんの日か気付いていないようだな」

羅刹は笑いながら、胸ポケットのサングラスを掛けた。


「バレンタインは元々男から贈り物をするものだからな」

センクウも同じようにサングラスを掛け、胸に一輪の黒い薔薇を挿した。


「思えばには貰ってばかりだからな」

影慶もサングラスをし、手に嵌めていた右手の黒手袋取って、ポケットにしまった。




「さて、一仕事するか」



影慶のその一言で、四人の姿は一瞬にして消えた。

その僅か30分後、誰からか分からぬ通報である大物テロ組織がお縄になるのだが、その事実は権力に揉み消されてニュースになることはなかった。





そしてといえば。

その日は美味しいものをたんまりとたいらげ、邪鬼に手を引かれながらのんびりとパーティーを楽しんでいた。


だが、パーティーで身に付けたドレスや装飾品の全てが5人からの贈り物だと知り、お返しに悩むが男塾内で見られるのは、その一ヵ月後の話。













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フリー小説です。お持ち帰りは自由ですが、、リンクと著作が昴流で
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蛇足な裏話(というか妄想)↓
実は先日話題の池袋のBLカフェに行きまして・・・その影響で
ホスト的な死天王が書きたい!んでバレンタインだ!と思いネタを練りました。
結果見事に挫折。いっそのことパラレルで男塾でホスト部とか書いた方がいいかもしれない。
ホスト倶楽部「ザ・男塾」
オーナーが伊達(裏でヤクザ業)NO.1が邪鬼様。NO.2が(癒し系)影慶。新人ダークホースが桃。
折った斬岩剣を直す為に不本意ながらイヤイヤ働く赤石先輩(笑えないのでいつも怒られる)貧乏留学生J。
伊達の手下、三面拳+卍丸。羅刹はご婦人に大ウケ、センクウはバーテンダー(人気は凄まじい)
新人ホスト売れなくて便所掃除な田沢達。


こんなホスト倶楽部があったら、通いつめますが。赤石先輩を指名して嫌がらせをしたい。